横浜国大が開発、レーザーで距離と振動を測定
「ライダー」を工夫、機械や建造物の異常検知に応用も
レーザー光で目標物までの距離を測る「ライダー」を工夫し、距離とともに振動している様子も分かる技術を開発したと、横浜国立大の水野洋輔准教授や同大4年清住空樹さんらが4日までに発表した。実験段階だが、遠近を問わず、調べたい位置にある物体の振動周波数と波形を測定できる。将来は機械や建造物などの異常な振動を検知して故障や事故を防いだり、微粒子を含む空気の流れや人体の呼吸を離れた位置から測定したりする応用が期待される。
水野准教授は「振動発生装置を数㍍先に設置する実験では、周波数が100キロヘルツまでの振動を検出した。原理的には距離が数十㍍でも、周波数がもっと高くても検出できる」と説明。「今後は実物の機械などを対象に実証したい」と話している。東京工業大や芝浦工業大との共同研究で、論文は米物理学協会の専門誌APLフォトニクスに掲載された。
ライダーは近年、車の自動運転で前方の障害物を検知するのに使われている。物体との距離は、レーザー光を照射し、反射して戻って来るまでの時間から計算できる。一方、振動については、振動で物体が微妙に近づいたり遠ざかったりするため、反射光の波長がずれる現象を利用した「レーザードップラー振動計」があるが、短距離でしか測定できなかった。
水野准教授らは、離れた場所にある物体の距離と振動を同時に検出するため、「相関領域ライダー」法を開発した。近赤外線のレーザー光を照射用と参照用に分割した上で、物体に照射して反射して来た光と参照用の光を重ね合わせ、強さを測定。物体の位置によって重ね合わせた光が大幅に強くなる現象を利用し、距離と振動を検出した。さらにレーザー光源の波長を操作し、物体が遠近どの位置にあっても測定できるようにした。