北大・自然科学機構、細胞内輸送の「遅れ」観察


微小管の変形がキネシンに影響、神経疾患など解明に期待

北大・自然科学機構、細胞内輸送の「遅れ」観察

細胞内でトラックの役割を担う「キネシン」が微小管の上を動く様子の高速原子間力顕微鏡画像。微小管が真っすぐな場合(上段)に比べ、曲がった場合は遅くなる(北海道大、自然科学研究機構など提供)

 細胞内で荷物を運ぶトラックの役割を担うモーターたんぱく質の一種「キネシン」は、道路になる微小管が曲がったり、伸縮したりすると、動きが大幅に遅くなることが、高性能な顕微鏡による観察で確認された。北海道大や自然科学研究機構生命創成探究センター(愛知県岡崎市)などの研究チームがこのほど米科学誌サイエンス・アドバンシズに発表した。

 荷物のたんぱく質やリボ核酸(RNA)などの輸送が停滞すると、さまざまな病気の原因になる。特に軸索や樹状突起がある神経細胞では長距離の輸送が行われているため、輸送の障害が神経疾患の要因になると考えられており、研究成果は基礎的な仕組みの解明に役立つと期待される。

 キネシンはアデノシン三リン酸(ATP)をエネルギー源とし、形を変えたり元に戻したりすることを繰り返して微小管の上を進む。動きが遅くなるのは、微小管を構成するたんぱく質との位置関係が屈曲などで変わり、結び付こうとする力が強まってしまうためだと推定された。