声一筋30年、「話せば敵地もオセロのように」
「カリスマウグイス嬢」の異名持つ車上運動員・幸慶さん
中盤を迎えた衆院選。選挙カーで街を駆け回る候補者の横には、巧みな話術で有権者に訴えるウグイス嬢と呼ばれる車上運動員がいる。この道30年のベテランは「上手に話せば有権者が耳を傾け、その場の状況がオセロのようにひっくり返る」とやりがいを語る。
「ご清聴ありがとうございました」。伸びやかな声が街に響く。公示された19日、大阪府内のある選挙区に「カリスマウグイス嬢」の異名を持つ幸慶(本名・安東)美智子さん(52)=神戸市=の姿があった。第一声を上げる候補者の隣で通行人に手を振ったり、ビラを配ったりしていた。
初めてマイクを握ったのは大学生だった1991年の統一地方選。縁遠い政治家との仕事に重圧を感じ、「原稿を読むのが精いっぱいだった」。婚礼やイベントでの司会経験はあったが、アナウンス学校で基礎から学び直し、97年に司会業の派遣会社を設立した。市町村議会から国政まで、これまで約400件の選挙に関わり、候補者の当選率は「9割近い」という。
車上アナウンスは臨機応変。ごみ収集の作業員には「ごみ減量化、環境リサイクルも○○が一生懸命取り組みます」。信号待ちした際は「助手席の○○の姿、その目でお確かめください。皆さんが渡る横断歩道のように政治の問題点に白黒はっきりつけます!」。
時には聴衆からやじが飛んだり、怒鳴られたりすることも。報酬は公選法で1日当たり上限1万5000円と定められ、「割に合わない」と感じるときもある。それでも「7割アウェーの状況を、声一つでオセロのように、候補者のカラーにひっくり返す面白さがある」と魅力を語る。
コロナ禍で初の大型国政選挙。空き店舗が目立つなど、街の風景は17年の前回衆院選から様変わりした。幸慶さんは「有権者はえたいの知れない不安感を抱えていると感じる一方、政治を考え始めたと思う。ビジョンや主体性を持って活動している候補かどうか、注目してほしい」と話した。