迫る衆院選、業者大わらわ「猫の手も借りたい」
街宣車やだるまの注文殺到、コロナ下で「出馬中」マスクも
14日午後の衆院解散を経て、19日に公示される総選挙。街宣車やマイク、スピーカーなどを扱う会社には各陣営から引っ切りなしに注文が舞い込む。公示日が当初予想より1週間前倒しされた過密日程に、業者からは「土日返上」「猫の手も借りたい」との声が上がっている。
大阪府大東市にある選挙カー専門のレンタル会社「イイダコーポレーション」には、各地から約70台の注文が殺到。車体にスピーカーなどを取り付ける作業が急ピッチで進められていた。同社顧問の飯田正紀さん(77)は「解散が予想より早かった。職人が土日返上で準備を進めているが、一分一秒を争う状況だ」と話す。
新型コロナウイルス対策で「車内に飛沫(ひまつ)防止用のビニール製カーテンをつり下げたい」との注文にも対応した。「今から注文しても間に合うか」との電話もあるが、断らざるを得ないという。
通販サイト「選挙用品ドットコム」には、選挙日程が決まった4日ごろから注文が急増。消毒液や飛沫防止シートに加え、表に政党名や「出馬中」などの文字入れができる新製品の「選挙マスク」が売れ筋だ。運営する「マテリア」(横浜市)の田村亮代表(44)は「マイクカバーや手袋、鉢巻きなどは通常なら陣営内で使い回しだが、今回は一人に一つ必要。ようやく納品作業が佳境に入ったところだ」と忙しそうに話した。
各陣営に欠かせないのが「必勝だるま」。群馬県高崎市の「大門屋」には、8月ごろから任期満了を見越した注文が相次いだ。伝統工芸士で経営者の中田純一さん(69)は「(元首相の)福田赳夫さんが現役の頃から選挙のだるまさんを作ってきたので、解散時期は自分で分かるようになった」と笑う。日によっては20個仕上げることも。「急な注文でもその日のうちに発送できるよう、無心で筆を入れている」と話した。