入院患者連続死、元看護師が3人の殺害を認める
横浜地裁で初公判、久保木被告の刑事責任能力が争点に
横浜市の大口病院(現横浜はじめ病院)で2016年、入院していた70~80代の患者3人の点滴に消毒液を入れ殺害したとして、殺人罪などに問われた元看護師久保木愛弓被告(34)の裁判員裁判の初公判が1日、横浜地裁(家令和典裁判長)であった。久保木被告は「すべて間違いありません」と述べ、起訴内容の事実関係を認めた。弁護人は刑事責任能力を争う方針を示した。
久保木被告は捜査段階で3人の殺害を認め、「自分の勤務時に容体が急変したり死亡したりした場合、家族に納得してもらえるか不安だった」などと動機を供述していた。横浜地検は被告を鑑定留置して事件当時の精神状態を調べ、責任能力を問えると判断した。
検察側は冒頭陳述で、患者の家族に責められることへの不安のため、点滴袋への消毒液混入を繰り返すようになったと指摘。起訴前の精神鑑定の結果などから、被告には軽度の自閉スペクトラム症の特性があったものの、正常な心理で行動しており、完全責任能力があったと主張した。
弁護側は、起訴後に行われた精神鑑定を根拠に、被告は統合失調症の著しい影響下にあり、心神耗弱状態だったと反論。3人のうち症状の重かった男性患者2人については、病気に伴う肺炎なども死因になったと訴えた。
公判では、精神鑑定に当たった医師らの証人尋問が予定されている。22日に論告求刑と最終弁論があり、判決は11月9日の予定。
起訴状によると、久保木被告は16年9月15~19日、大口病院に入院していたいずれも当時88歳の男性2人と78歳の女性の点滴袋に消毒液を入れるなどして殺害。同18、19日には、別の患者4人の点滴袋などに消毒液を混入したとされる。