岸田新総裁、じっくり話を聴く「僕らのパパ」
野球部で辛抱強く練習に励む、生真面目な性格で定評
自民党新総裁に選ばれた岸田文雄氏(64)は、あいさつで「特技は人の話をしっかり聴くこと」と声を張り上げた。生真面目な性格は昔から定評がある。高校時代の同級生らから一目置かれ、「僕らのパパ」と慕われていた。
名門進学校、開成高校(東京)の同級生で、野球部のチームメートだった製紙大手グループ会社社長の男性(64)は「一切弱音を吐かず練習していた」と振り返る。合宿はOBも参加し厳しさは増したが、「宿舎までの10~15キロの道のりも我慢強く走りきっていた」と言う。
間もなくレギュラーとしてショートやセカンドを担った。男性は「度胸があって、周りを見てコントロールする姿が表れていた」と語る。
勉強も野球も黙々と取り組み、卒業アルバムに載った岸田氏の写真には「ボクらのパパ」と書き添えられている。男性は「もう45年も前ですが、今と一緒で、すごく真面目。じっくり話を聴き、的確な意見を述べる姿は一家の理想の父親像だった」と語った。
早稲田大法学部の同級生だった会社役員臼杵肇さん(64)も「隔たりなく付き合い、いろいろな人の話に耳を傾けていた。正道を行く、硬派な熟慮の人」と印象を語る。共に2浪したこともあって、よく酒を酌み交わした。岸田氏の父文武氏が衆院選に出馬した際、広島で一緒に選挙運動を手伝ったことも。
冷静な岸田氏だが、プロ野球広島カープのこととなると人が変わったという。「むきになって、負けている試合をテレビで見ている姿はまるで子ども」と苦笑する。
1993年の衆院選初当選後、約20年間通ったのが東京・浅草の「広島お好み焼き凡(ぼん)」。約2年前に閉店したが、店主だった石松満さん(76)は「広島の酒『賀茂鶴』を好んで飲んでいた」と懐かしむ。外相時代、若い官僚ら約20人を連れて来ては、一人ひとりにねぎらいの言葉を掛ける姿が今も印象深い。「威張らず、気を配り、周りの人を大事にしていた」と語った。