偽版画が流通、警視庁が元画商ら2人を逮捕


東山魁夷作品「白馬の森」など無断複製、著作権法違反で

偽版画が流通、警視庁が元画商ら2人を逮捕

捜査員に連れられ自宅を出る加藤雄三容疑者(中央)=27日午前、大阪府池田市

 

 東山魁夷ら日本を代表する画家の偽版画が流通した事件で、警視庁生活経済課は27日、著作権法違反容疑で、大阪府の元画商加藤雄三(53)、奈良県の工房経営者北畑雅史(67)両容疑者を逮捕した。同課は認否を明らかにしていない。

 業界団体によると、偽版画は少なくとも120点見つかっている。同課は長年、大規模に偽作が作られていた疑いもあるとみて全容解明を急ぐ。

 逮捕容疑は、2人は共謀し、2017年1月中旬から19年1月上旬ごろの間、著作権者の許諾を得ず、東山魁夷の版画作品「白馬の森」など計5作品の版画7枚を複製し、著作権を侵害した疑い。

 同課によると、加藤容疑者は真正品を含め、作品を数十万から数百万円で販売していた。同容疑者の依頼を受け、北畑容疑者がスキャナーで元の絵を取り込み、デジタル技術を使って複製をしていたという。

 関係者によると、別の画商らが昨年春、同じ版画が不自然に多く流通していることに気付き、調査したところ、作品の色合いや紙、サインなどが真正品と異なることが判明。流通経路から加藤容疑者が特定された。

 加藤容疑者は業界団体「日本現代版画商協同組合」(日版商)の聞き取りに対し、10作品の偽版画への関与を認めたとされ、昨年12月に除名処分となった。

 北畑容疑者は2月、取材に対し、「(加藤容疑者の)依頼で約8年前から版画を制作し、約40点の作品をそれぞれ20枚ずつくらい作った」と話した。

 日版商が外部機関に依頼し、加藤容疑者が流通に関与した東山魁夷(1908~99年)と平山郁夫(1930~2009年)、片岡球子(1905~2008年)の計10作品、201点の鑑定をしたところ、約6割の120点が偽作と判断された。ほかに有元利夫(1946~85年)の作品でも偽版画が見つかっている。

 警視庁は昨年12月、2人の関係先を家宅捜索。東山や平山らを含む日本人画家6人と、ピカソやシャガールといった海外作家6人の版画計約80点を押収し、鑑定を進めていた。