上智大生殺害から25年「諦めぬ気持ちを捨てず」
75歳の父賢二さん「とにかく悔しい」、事件の解決を願う
上智大4年の小林順子さん=当時(21)=が1996年、東京都葛飾区柴又の自宅で殺害、放火された事件は、未解決のまま9日で発生25年を迎える。「諦めないという気持ちを決して捨てない」。父賢二さん(75)は、事件解決を強く願っている。
賢二さんは当日、出張先で自宅の火災を知り、順子さんの搬送先の病院に電話。その時、娘の死を知らされた。「頭の中は真っ白、目の前は真っ暗。(順子さんが)夢にまで見た海外留学の2日前じゃないか」。賢二さんは、突き付けられた現実を受け入れられなかった。
パトカーや消防車などが何台も並ぶ光景が今も脳裏に焼き付いている。やじ馬をかき分けて自宅前に駆け付けると、刑事から「順子さんはただの事故死じゃないですよ」と言われた。「そこから25年。一体誰が何のために、わが娘を。明けても暮れても、この連続です」
家庭の事情で、高校卒業後に就職の道を選んだ賢二さん。「(順子さんには)自由に大学生活を謳歌(おうか)してほしい」と考えた。「帰りが遅くなると、駅まで自転車で迎えに行き、暗い夜道を一緒に帰ったのが一番懐かしい思い出」と振り返る。「自分が経験できなかった大学生活を楽しんでいるんだろうな」。口には出さなかったが、順子さんからは充実感が伝わってきたという。
「悲しいとか犯人が憎いとか、当然そういう思いもあるが、とにかく悔しい。あれだけ努力して海外留学を手に入れて、本人も悔しかったと思う」と、夢半ばで命を絶たれた娘の無念を語った。
2010年に殺人などの公訴時効が撤廃され捜査は続くが、事件の風化を感じているという。賢二さんは7日、現場跡地で献花。「犯人は今もどこかで私たちを見ている。解決を期待し、遺族の気持ちを広く訴えていく」と決意を新たにした。