テコンドー太田選手、競技の魅力体張りアピール


冬季メダリストが現役復帰、連続蹴りは世界トップクラス

テコンドー太田選手、競技の魅力体張りアピール

テコンドー女子58㌔超級、初戦となる2回戦で攻め合う太田渉子選手(右)=4日、千葉・幕張メッセ

 東京パラリンピックのテコンドー女子58キロ超級に出場した太田渉子選手(32)=ソフトバンク=。冬季パラリンピックにスキーで3大会連続出場したメダリストだが、引退後に出合ったテコンドーに魅了され、現役復帰。体を張って競技の魅力を伝える。

 国内有数の豪雪地帯、山形県尾花沢市の出身。生まれつき左手に指がなく、幼い頃は「なぜ外見が違うんだろう」と悩み、指がない理由を尋ねられないよう隠した。「人前に出たくない、おとなしい性格だった」という。

 小学校に上がった頃、教諭に「どうして見せないの?見せて嫌なことを言われたの?」と聞かれ、はっとした。左手を見られて友達を失ったことなどなかった。以来、積極的に見せることで友達は増え、左手は「大好きなチャームポイント」になった。

 同時期にスキーを始め、「何でも工夫してできるようになれ」という両親の教えから乗馬、太鼓、ピアノに挑戦。スキーでも持ち前のチャレンジ精神で頭角を現し、日本勢最年少の16歳で出場した2006年のトリノ大会はバイアスロンで銅メダルを獲得した。バンクーバー大会はクロスカントリーで銀、ソチ大会は日本選手団の旗手を務めた。

 引退後、パラスポーツの普及に取り組む中、パラテコンドーに出合ったが、「こんなに面白いのに日本の選手がいなかった」。それならと、18年に選手として現役復帰した。

 スキーで培った体幹や脚力、バランス感覚は武器になり、代表の洪君錫監督は「相手が1発蹴る間に3発入れる連続蹴りは世界でもトップクラス」と絶賛。冬季パラで手が届かなかった金メダルを目指したが準々決勝で敗れ、敗者復活から銅メダルを狙う。