夏冬出場の陸上・村岡桃佳、走り切った夏
涙で「二刀流」に区切り、「大変だけど楽しかった」
2018年平昌冬季パラリンピックの金メダリストが夏の挑戦を終えた。村岡桃佳(トヨタ自動車)は女子100メートル(車いすT54)で6位。アルペンスキーとの「二刀流」に区切りをつけるレースを終え、「後悔は全くない。すごく大変だったけど、何よりも楽しかった」。目には涙が浮かんでいた。
予選は「出遅れた感覚」があり、不本意だった。タイムは自己ベストよりも0・76秒遅い17秒10。目標に掲げた決勝進出は果たしたが、出場10人中8番目とぎりぎりの通過だった。
決勝は好スタートからぐいぐい加速。後半に底力を発揮する世界の強豪にはかなわなかったが、予選よりタイムを縮めて16秒71。「予選と決勝で、ゴールして見た景色は全然違って見えた」
19年春から実業団チーム、WORLD-ACの松永仁志監督の指導を受け、陸上への挑戦を始めた。東京大会の1年延期もあり、22年北京冬季パラ出場を見据えたスキーとの両立の難しさは想像以上。「心が何度も折れそうになった」。励みになったのは、スキーの先輩やコーチらの「桃佳だったらできる」という言葉。陸上でのパラ出場という幼い頃の夢をかなえ、国立競技場のトラックを疾走した。
半年後には雪山に舞台を移し、アルペンスキーで2大会連続のメダル獲得を狙う。「想像を絶するつらさのトレーニングも、今ならできる気がする」と笑った24歳。夏の表彰台には上がれなかったが、かけがえのない経験を得たはずだ。