競泳の山口尚秀、自分の可能性を信じ頂点に 


自身の世界記録も更新、「ハイブリッド」で課題達成

競泳の山口尚秀、自分の可能性を信じ頂点に

競泳男子100㍍平泳ぎ(知的障害)で金メダルを獲得した山口尚秀=29日、東京アクアティクスセンター

競泳の山口尚秀、自分の可能性を信じ頂点に

競泳男子100㍍平泳ぎ(知的障害)決勝で力泳する山口尚秀=29日、東京アクアティクスセンター

 王者にふさわしい泳ぎで、20歳の山口尚秀(四国ガス)がパラリンピックの頂点に立った。男子100メートル平泳ぎ(知的障害)で自身の世界記録を塗り替えて優勝。「世界記録の更新と金メダルの獲得。二つの課題を達成できてよかった」。自ら掲げた「障害がある人の可能性を示す」という目標も成し遂げた。

 恵まれた体格と30センチの足から繰り出すキックが、大きな推進力を生み出す。競技歴は浅いが、東京五輪でも活躍したスター選手アダム・ピーティ(英国)の泳ぎを理想に、自分に合った泳ぎを身に付けた。

 初めて出場した2019年の世界選手権でいきなり優勝。その後は姿勢を改善してキック後の「伸び」を増すことで、さらなるスピードアップに取り組んできた。「上半身の体重を前に持っていくことを意識した。それで推進力が出る」

 決勝で普段よりピッチを上げても安定していたのは、基本ができていたからこそ。隣のコースのオーストラリア選手に追撃を許さず、残り20メートルからはさらに加速。伸びとピッチのバランスを取り、自ら「ハイブリッドカー」と例える泳ぎだった。

 新型コロナウイルスの感染拡大で大会の1年延期が決まり、練習に集中できない時期もあったという。しかし、周囲の助けもあり、「目の前のことを一つ一つこなしていこう」と気を取り直した。

 心身を整え、「自分の力、可能性を信じて競技に取り組んできた」と自信を持って臨んだパラリンピック。初の舞台で見せた堂々とした泳ぎは、似た境遇で苦しむ人へも心強いメッセージとなるはずだ。