小川和紗、真骨頂の体落としで銅メダル獲得
体格差ある強敵を破る、松本薫さんの取り組む姿勢が影響
身長151センチの小川和紗(オー・エル・エム)は、柔道女子70キロ級にあってひときわ小さい。3位決定戦で対戦したオリガ・ザブロドスカヤ(ロシア・パラリンピック委員会)は頭一つ分大きく、世界選手権優勝経験もある強敵だった。
体格差には慣れている。「リーチや身長の問題はどうにもできない。どうすれば立ち向かえるか」と考え続け、低い体勢の担ぎ技を磨いてきた。残り1分となる前に、技ありを奪った体落としは小川の真骨頂。リードを守り切り、パラリンピックの柔道日本女子で通算2個目のメダルをつかんだ。
先天性の目の病を抱える。中学時代に始めた柔道は、視力の低下を理由に離れた時期もあったが、18歳から視覚障害者柔道に取り組み、24歳で初の大舞台に立った。
2012年ロンドン五輪女子57キロ級金メダリストの松本薫さんに乱取りの相手をしてもらったことがある。「4分間に13回も投げられた。私のように実力差がある相手にも手を抜かない」と取り組む姿勢で影響を受けた。コロナ禍では電柱にゴムチューブを付けて打ち込みをするなど工夫を重ね、力を伸ばした。
メダルを決めた瞬間に喜びを表さなかったのは「相手がいての試合。畳の上ではガッツポーズしない」と決めているから。試合前はぬいぐるみに話しかけるのがルーティン。天真らんまんな明るさを持つニューヒロインは、柔道家としての芯も太い。