パラ柔道小川和紗選手、乱取りが「生きがい」


明るさを強みに銅メダル獲得、相棒は猫のぬいぐるみ

パラ柔道小川和紗選手、乱取りが「生きがい」

柔道女子70㌔級で銅メダルを獲得した小川和紗選手=29日、日本武道館


 
 視覚障害者柔道女子70キロ級で銅メダルを獲得した小川和紗選手=オー・エル・エム=。技を掛け合う乱取り練習を「生きがい」と無邪気に語る24歳の強みは、底抜けの明るさだ。今大会女子柔道で唯一のメダルを決め、「ただただうれしい」と笑顔をはじけさせた。

 中学時代に柔道と出合い、健常者に交じって熱中した。だが、視力低下が進み、高校2年で特別支援学校へ。柔道部がなく競技からも離れた。「もっとやりたかったな」。思いを断ち切れず、卒業翌日、視覚障害者柔道の強化指定選手の合宿にいきなり飛び込んだ。

 先天性の脳腫瘍で視野の中心が欠けて見える。視力は両目とも0・01程度に下がったが、「目のことで落ち込んだりはしない。柔道ができる幸せが大きい」と言い切る。

 練習前はヒップホップなど洋楽に合わせて踊ることでリラックス。勝ちに貪欲だが、負けは引きずらない。コーチの仲元歩美さん(37)は「見えないことで悔しい思いもたくさんしてきたそうだが表に出さない。あっけらかんとしている」と明るさを買う。

 大会での相棒は、猫のぬいぐるみ「きなこ」。7年前に雑貨店で出会い、国際大会にも連れて歩く。試合前に「緊張するね」「和ちゃんは強いから勝てるよ、落ち着いて」と会話すると集中できる。欠かせないお守りで、きょうもスタンドから力をくれたという。

 準決勝で一本負けを喫したが、仮眠を取って気分を一新。3位決定戦では身長151センチの体で、大柄な外国人選手を投げ飛ばした。「次はパリで金を取る」。気持ちは3年後に向かっている。