視覚障害5000mの唐沢剣也、恩返しの銀メダル


地道な努力が大舞台で結実、入り交じる悔しさと達成感

視覚障害5000mの唐沢剣也、恩返しの銀メダル

陸上男子5000㍍(視覚障害T11)でゴールする唐沢剣也(右)=27日、国立競技場(AFP時事)

 銀メダルを手にした男子5000メートル(視覚障害T11)の唐沢剣也(群馬県社会福祉事業団)は充実感をにじませた。周囲への恩返しの思いを込めたレースを振り返り、「仲間とつかみ取った銀メダルをうれしく思う」と喜んだ。

 伴走者は、群馬県が拠点のSUBARU陸上部コーチの小林光二さんと、トマト農園で働く東農大陸上部出身の茂木洋晃さん。唐沢と歩幅の近い小林さんが「楽をさせる」意識で4000メートルを伴走し、スピードのある茂木さんに代わってからスパート。「5年間やってきた中で一番のメンバー」(唐沢)の戦略通りの展開だった。

 ラスト1周を先頭で迎え、「トップいけるぞ」と茂木さん。だが、最後の直線の入り口付近でブラジル選手の底力に屈し、4・5秒差の15分18秒12でゴールした。

 先天性の病気により、小学4年で視力を失った。前回リオデジャネイロ大会がきっかけで競技を開始。前橋市内の鍼灸(しんきゅう)マッサージ店を通じて知り合ったコーチやガイドランナーとともに、仕事の合間に走り続けた。

 4年近く唐沢を支える茂木さんは「練習に対するひたむきさは当初からすごい」。地道な努力が実を結び、5000メートルでは2019年世界選手権で3位、今年5月には15分9秒94の世界新記録をマークした。小林さんも「スパート力がすごい。勝てる選手」と太鼓判を押す。

 金メダルに届かなかった悔しさと達成感が入り交じるが、「今出せる力を全て出し切っての2位」と表現した唐沢。急成長を遂げた27歳は、大舞台で実力を証明した。