パラのホストタウン、共生社会を意識する機会に
109自治体が登録、市民と選手をオンラインでつなぐ交流
24日開幕の東京パラリンピックでは、各国選手の受け入れや交流などを担う「共生社会ホストタウン」が109自治体登録されている。五輪同様、新型コロナウイルス禍で事前合宿の断念が相次ぎ、感染防止の制約も多い中、自治体は「おもてなし」を工夫しオンラインで交流を展開。市民らが多様性を意識する契機になっている。
金沢市には3日から17日間、フランスの水泳選手団8人が滞在した。市は昨夏ごろから新型コロナ対策のマニュアル作成に着手。「車いすの選手は同じ練習会場でも触る壁の高さが健常者と違う」(担当者)など当事者目線を意識した。
2日から市内にまん延防止等重点措置が適用され、練習の一般公開が中止されたが、市は歓迎の意を示そうと、選手の食事中に地元の小中学生が制作した動画を放映。障害者が参加する「いしかわ福祉水泳協会」とのオンライン交流も行い、水泳を始めた理由や泳ぎ方などについて、視覚障害を持つ児童らが選手団に質問をぶつけた。
滋賀県守山市はゴールボールと視覚障害者柔道のトルコ代表29人を受け入れた。オンライン交流では地元の中学生が競技の魅力や大会への意気込みを尋ね、吹奏楽部の演奏を披露。選手は「すてきな演奏で感動した。事前合宿でモチベーションがどんどん上がっている。勝利できたら喜びを分かち合いたい」と謝意を示した。
フランスのトライアスロン選手団の事前合宿を受け入れている山梨県富士河口湖町。車いすや身体障害を疑似体験できるセットを装着するなどしてパラ競技「ボッチャ」の体験研修会を開いたほか、観光ガイドブックに主要施設のバリアフリー情報を掲載するなど機運醸成に努めてきた。
町の主要産業は観光業。東京への応援ツアーは断念したが、一連の活動を通じて「町が掲げる『誰にでもやさしい観光地づくり』に全町で取り組みたい」(担当者)考えだ。
兵庫県明石市は誰もが住みやすいユニバーサルデザインをまちづくりに採り入れた実績が評価され、「先導的共生社会ホストタウン」に登録された。韓国と台湾がパートナーだが事前合宿はせず、大会後の直接交流も中止に。帰国後のオンライン交流を検討しており、担当者は「残念だが、その中でできることを探すのも、やりがいだ」と前を向いた。