堂々14歳、水泳の山田美幸選手が世界の舞台へ


女子100m背泳ぎでメダルに期待、健常者大会でも完泳

堂々14歳、水泳の山田美幸選手が世界の舞台へ

山田美幸選手

 いよいよ開幕する東京パラリンピック。25日の女子100メートル背泳ぎに出場し、メダルが期待されるのが山田美幸選手(14)=WS新潟=だ。成長著しい中学3年生。コーチは「健常者と一緒の試合でも、堂々と泳ぐ強心臓。初めてのパラでも実力を出し切れる」と活躍を確信する。

 山田選手は生まれつき両腕がなく、両脚にも左右の長さが違うなどの障害がある。競泳の運動機能障害の中では、2番目に重い「S2」クラスに該当する。キックに加え、肩の周囲を回して推進力を出し、頭の向きで方向を調整して泳ぐ。

 幼少時、ぜんそくを治そうと始めた水泳。「水の中では友達と同じように動ける」と、すぐ夢中になった。小学生で見た前回のリオデジャネイロ大会。「こんなふうに世界の人と泳ぎたい」が夢になった。

 ずっと指導するコーチの野田文江さん(79)が、長所に挙げるのが物おじしない強い精神力だ。「水深3メートルのプールでも、『沈んでもまた浮いてくるから』と笑顔で飛び込む。きつい練習でも泣き言は絶対言わない」。

 野田さんが思い出すのは2018年、新潟市で開かれた年齢別大会。強化指定に向けた計測のため急きょ100メートル自由形に出場することになったが、一緒に泳ぐ他の7人は全員健常者だった。障害者と同時のレースは前例がない。野田さんは「どうしても注目される。嫌がるのでは」と不安だったが、山田選手は「分かったー」と屈託なくスタート台に立った。

 結果は7位の選手から1分以上離された8位。それでも、懸命な泳ぎや鮮やかなターンに歓声が湧き、ゴールの瞬間には万雷の拍手が起きた。野田さんは「声援に応え、堂々と泳ぎ切った姿に涙がこぼれた」という。「緊張で実力が出せないことはありえない」と言い切る野田さん。「あなたの泳ぎで『なせば成る』という姿を見せつけて」とエールを送った。