日航機遺族、カナダの子供たちに読み聞かせ
絵本「パパの柿の木」で伝えたい思い、「必ず春は来る」
36年前の日航ジャンボ機墜落事故で夫を亡くした谷口真知子さん(73)=大阪府箕面市=が、英訳出版した自身の絵本をカナダの子供たちにオンラインで読み聞かせた。「必ず春は来る」。新型コロナウイルスの拡大で日常が一変した今だからこそ、伝えたい思いがある。
夫正勝さん=当時(40)=が庭に植えた柿の木は、事故の年の秋に初めて実をつけた。柿に励まされ、立ち直っていった息子2人を描いた絵本「パパの柿の木」を2016年に自費出版し、20年に地元の高校生の協力を得て英訳出版した。
今月7日には群馬県藤岡市、友好都市のカナダ・リジャイナ市をオンラインでつないだ読み聞かせイベントが実現した。事故当時、現場近くの藤岡市には遺体安置所が設置され、遺族を支えた縁がある。
「家族の日常は断ち切られたが、悲しみの先には新しい幸せもあった」。谷口さんは箕面市からパソコン画面を通じて英語で語り、同市のシンガー・ソングライター北川たつやさん(36)が絵本を基に作曲した「茜空」を歌った。
英語の練習を重ねたものの、新型コロナの拡大で延期を余儀なくされ、藤岡市の小中学校での読み聞かせもかなわなかった。それでも「前を向いてできることを続けていれば、必ず春は来ます」と力を込めた谷口さん。春に芽吹き、秋にたくさんの実を結ぶ柿の木が冬に枯れたようになる姿と、コロナ禍の世界が重なるという。
画面越しの交流に涙ぐむカナダの子もいた。「パパの思いが広がっているよ」。8日には御巣鷹の尾根にある墓標に語り掛けた。