神戸高2刺殺、被害者と面識なく突発的な犯行か
逮捕から1週間、「腹が立った」動機の解明が今後の焦点
神戸市北区で2010年、高校2年の堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件で、殺人容疑で当時17歳のパート従業員の男(28)=愛知県豊山町=が逮捕されてから11日で1週間。男は堤さんと面識がなく、突発的に襲ったとみられる。兵庫県警の調べに容疑を認めており、動機の解明が今後の焦点となる。
事件は10年10月4日午後10時45分ごろ発生。堤さんは自宅近くの歩道脇で、交際相手だった中学3年の女子生徒と座って話していたところ、頭や首などを複数回刺された。女子生徒は逃げて無事だった。
県警は捜査本部を設置。事件6日後には現場近くの側溝から凶器のナイフが見つかったが、指紋などは検出されなかった。目撃証言なども少なく、延べ約3万3000人の捜査員を投入したが捜査は難航。警察庁の懸賞金対象事件に指定され、堤さんの父、敏さん(62)も逃げた男の似顔絵が書かれたビラを配るなどしたが、特定は進まなかった。
捜査関係者によると、県警は最近になり豊山町に住む男が事件に関与しているとの情報を入手。現地に捜査員を派遣して裏付けを進めたところ、堤さんの当時の着衣から検出されたDNA型が男のものと一致した。
男は4日の逮捕後、調べに素直に応じ、「2人でいるのを見て腹が立った」という趣旨の供述をしているという。当時は現場周辺で生活していたが、女子生徒は「知らない男だった」と説明しており、面識はなかったとみられる。
男の自宅とみられる家の近隣住民によると、男は約5年前に豊山町に転居し、両親と3人で生活。70代女性は「普通の若者より真面目そうな感じ。いまだに信じられない」と話した。
事件から11年を目前にした急展開に、敏さんは「今後は事件だけじゃなく、容疑者とも向き合っていかなあかん」と強調。ある捜査幹部は「遺族のことを考えるとほっとした。真実を明らかにしたい」と気を引き締めた。