父の教え、集中力とスピードを武器に銅獲得


空手組手の荒賀龍太郎選手、異名は「スピードドラゴン」

父の教え、集中力とスピードを武器に銅獲得

空手の男子組手75㌔超級準決勝でサウジアラビア選手と健闘をたたえ合う荒賀龍太郎(右)=7日、日本武道館

 空手男子組手75キロ超級で銅メダル獲得を決めた荒賀龍太郎選手(30)=荒賀道場=は、持ち前の俊敏さから「スピードドラゴン」の異名を取る。日本の組手のエースは、恩師である父の教えに忠実に、技術と感覚を磨いてきた。

 両親が指導者、姉と弟も選手という空手一家で育ち、京都府亀岡市の実家にある道場で3歳から稽古を始めた。

 父正孝さん(68)にたたき込まれたのが、集中することの大切さ。電車や車での移動時に景色の一点を見詰め続けることで、集中力を鍛えた。正孝さんは「学校でも一番前に座って先生の一言一句を聞き逃さないようにしなさい、それが空手に役立つと指導した」と振り返る。

 速さも幼少時から磨いた。筋力を付けるための坂道でのトレーニングでは、駆け上がるだけでなく、下りも加速しながら全力で走った。父からは、そのスピード感を覚え込むよう言われた。

 「逃げない」という道場の教えそのままの攻撃的スタイルで、史上最年少の19歳で全日本選手権を制覇。2016年には世界選手権で優勝した。しかし、連覇を狙った18年の大会では、3回戦で無名の相手に敗れた。終了間際、不用意に出した突きに蹴り技を合わせられた。

 「素早さだけでは勝てない」。集中力を高めて相手の気配を察し、動きだしたところに技を仕掛ける戦法を意識するように。その後は世界大会で相次いで好成績を残し、五輪代表の座を勝ち取った。

 新種目として採用され、初めて迎えた舞台。ポイントでリードした試合終盤にも、逃げずに打ち合いを挑んだ。天性のスピードと幼い頃から鍛錬した集中力を武器に、日本に組手で初の五輪メダルをもたらした。