向田選手、「勝つ気持ち」でつかんだ金メダル


逆転負けの過去と決別、果敢に攻め続けた結果の逆転勝ち

向田選手、「勝つ気持ち」でつかんだ金メダル

女子53㌔級決勝で優勝し、コーチに迎えられ涙の向田真優選手(左)=6日、千葉・幕張メッセ

向田選手、「勝つ気持ち」でつかんだ金メダル

三重県の四日市ジュニアレスリングクラブ時代に吉田沙保里さん(中央)から手ほどきを受けた小学生の向田真優選手(左)と、後に競輪選手となった川嶋百香選手=2006年6月(向田選手の母啓子さん提供)

 果敢に攻め続けた先の結末は、逆転勝ちだった。レスリング女子53キロ級の向田真優選手(24)=ジェイテクト=が初出場の五輪で金メダルを獲得した。「勝つ気持ちを持ち続けた」。大一番での逆転負けに苦しんできた過去と決別した瞬間だった。

 三重県出身の向田選手は、幼稚園児だった5歳でレスリングに出会った。中学1年から親元を離れ、東京のエリートアカデミーへ。同郷で、小学校時代に手ほどきを受けたこともある吉田沙保里さんらを輩出した強豪・至学館大(愛知県)に飛び込み、精鋭にもまれ技を磨いた。

 高い技術を強みに数々の国際大会で優勝していた向田選手だったが、レスリング部監督の栄和人さん(61)は、体力と精神面の未熟さを見抜いた。栄さんの持論は「スタミナが勝つ気持ちにつながる」。「欠点を直さないと世界は取れないと思った」と振り返る。

 不安は的中した。2017年の世界選手権では5点リードしながら逆転負け。19年や20年のアジア選手権でも逆転を許し、敗北した。

 課題が残る中で決まったのが、五輪の1年延期だった。向田選手は練習拠点を東京に移し、徹底的にウエートトレーニングに取り組んだ。コーチとの二人三脚の鍛錬で、肉体的にも精神的にも成長を遂げた。

 挑んだ決勝の舞台。第1ピリオドで4点を失うも、「神頼みする気持ち」で攻撃を仕掛け、残り15秒で逆転を決めた。「最後は気持ちで戦った」。新王者の頬に大粒の涙が流れた。