女子レスリングの向田真優、ついに大輪の花
重ねてきた努力が結実、「吉田沙保里の階級」を制覇
攻め抜き、勝ちをもぎ取った向田の表情が崩れる。「最後まで気持ちを切らさなかった」。吉田沙保里が戦った階級で、会心の金メダルを獲得した。
最近は負けていない龐倩玉との決勝は苦しかった。第1ピリオドに4点を先取され、後半にやっとエンジンがかかる。片足タックルを仕掛け、2度バックを取って同点。最後は反撃してきた相手の左足を取り、場外に押し出した。執念の逆転勝ちだった。
中学からJOCエリートアカデミーで腕を磨き、17歳で出たユース五輪で金メダルを獲得した逸材。高速タックルが武器で早くから吉田の後継者として注目されたが、至学館大に入ってから伸び悩んだ。17年の世界選手権決勝では、5点リードを逆転される屈辱的な敗戦。アジア選手権でも2度、逆転負けを喫して優勝を逃している。「詰めが甘い」。痛いほど自覚していた。
精神的な弱さだけではなく、技術にも課題はあった。タックル後の処理に自信がないため、返し技を警戒して後半は消極的になってしまう。「今までやってこなかったことも取り組まないといけない」
昨年3月に拠点を愛知県の至学館大から東京に移し、婚約者でもある志土地翔大コーチと二人三脚で強くなるため模索した。出した答えは地道な筋力トレーニング。細かい箇所まで鍛え、パワーを増やすことで返し技に対応できる。肉体改造により減量幅も抑えられ、大会直前まで充実した練習ができた。
こうして重ねてきた努力が、決勝での逆転劇となって結実。「たくさんの人に、2人で練習できる環境をつくっていただいた。本当に感謝しています」。24歳がついに大輪の花を咲かせた。