スポーツクライミング野中生萌、けがを押して銀


「けがを理由に負けたくない」、逆境で力を出し切る

スポーツクライミング野中生萌、けがを押して銀

スポーツクライミング女子複合決勝、リードの野中生萌=6日、青海アーバンスポーツパーク(AFP時事)

 右手首と右膝を負傷しており、万全には程遠い。だが野中は予選後、「けがを理由に負けたくない」と、強い口調で言った。覚悟が銀メダルとなって結実した。

 女子は柔軟性やしなやかな動きを駆使する選手が多い中、筋肉質な野中は「下半身の出力が強く、パワー、瞬発力」が長所と自己分析している。持ち味をまずスピードで見せた。最近は日本記録を更新し続けてきた進境著しい種目。トーナメント3位決定戦で野口に先着し、大声を張り上げた。

 けがの影響が最も出るのがボルダリング。全3課題はいずれも難度が高く、一つもクリアできなかったが、少ない試技数でゾーン(中間点)に二つ到達し、3位となったのが大きかった。苦手のリードでも5位の高度まで粘った。

 過去にも、手術が必要と言われるほどの肩のけがを抱えながら、世界選手権で健闘したことがある。逆境には慣れている。「本当にけがをいくつもして、またかまたかと乗り越えてきた。今回も絶対に乗り越えたい」。持ち前の気持ちの強さで自らを奮い立たせ、3種目をやり遂げた。「決勝は痛みを無視して、がんがんテクニックを出した」と誇らしげに語った。

 1997年5月生まれ。「生萌」の名は「青々とした若葉が萌(も)える」というイメージで付けられたという。けがを押して示した躍動感あふれる登り。背中を追ってきた野口とともに表彰台に立ち「啓代ちゃんとメダルを取ることができて、本当にうれしい」。ライトアップされた会場で、満面の笑みが映えた。

 野中生萌 想定よりも悪い流れだったが、最終的にメダルを取ることができてうれしい。(銀メダルを)取った感じがしないが、じっくり味わいたいと思う。