20km競歩世界王者の山西利和、満足感乏しい銅


追う、追わないの判断が中途半端に、レース運びを反省

20km競歩世界王者の山西利和、満足感乏しい銅

陸上男子20㌔競歩、3位でゴールした山西利和=5日、札幌市

 世界王者として迎えた初の五輪。日本の競歩で初の金メダルが視界に入っていただけに、表彰台確保だけでは物足りなかった。銅メダルの山西は「自分の納得いくもの、満足いくものではなかった」と厳しく受け止めた。

 「追う、追わないの判断があまりにも中途半端だった」と振り返った。序盤に中国選手が飛び出した際、ハイペースは望むところだったのに、すぐに追わず、10キロを過ぎてから後続を引き連れて差を縮めた。先頭集団を形成し、終盤にはスパートしたがスタノと池田を振り切れず、逆に2人から離された。「2番手集団を引っ張って、なお勝ち切れる強さが自分にあると過信したと思う」。冷静な口ぶりで敗因を整理した。

 トップアスリートでは異色の京大工学部出身。競技成績以上に学歴ばかりが注目され、胸中は複雑だった。「選手としての実力が単に足りないだけ。ギャップを何とかして埋めたい一心」が原動力になった。勝利への「方程式」をイメージし、たどり着くための課題を一つずつ克服。勉強と同じ手法で着実に競技力を伸ばした。2019年に灼熱(しゃくねつ)のドーハで開催された世界選手権男子20キロ競歩では、日本人初優勝の快挙を遂げた。

 本番で金メダル有力候補となった後の取り組みは「ちょっと守りに入っていた部分がある」と今になって感じる。レース後は反省の言葉が多かったメダリストにとって、五輪は「自分の弱さを受け入れて、次に粛々と進んでいくしかない」と一層の精進を誓う場になった。