ボクシングの田中亮明、愚直に前進し清々しく銅


強豪を次々に破り屈指のダークホースに、「最高の景色」

ボクシングの田中亮明、愚直に前進し清々しく銅

ボクシング男子フライ級準決勝、打たれる田中亮明(左)=5日、両国国技館

 男子フライ級準決勝で、田中は0-5の完敗だった。だが、「負けたけど、自分との戦いには勝った。気分は悪くない」。晴れ晴れとした表情だった。

 作戦などない。ただ自分らしく前に出て、「かっこいい試合」を見せたかった。相手のフィリピン選手は巧みに足を使って田中の圧力をそらし、ストレートを打ち込んできた。終始劣勢だった展開。それでも最後まで逆転を信じて拳を振り続けた。

 前評判は決して高くなかった。1回戦で前回リオデジャネイロ五輪銀メダリストとぶつかるなど、くじ運もない。だが、強豪を次々に破り、今大会屈指のダークホースとして存在感を増していった。

 弟は、プロで世界3階級制覇を達成している恒成選手。その「七光りで目立っている」という自覚がある。しかし、五輪のメダルはアマチュアの世界でしかつかめない、特別な栄誉。銅メダルを手に入れ「最高の景色が見られた」と充実感がにじんだ。