レスリングの川井友香子、努力を重ねて頂点に
世界選手権覇者相手に一歩も引かず、「姉妹金」へ弾み
勝った瞬間、川井友香子は両手を挙げてスタンドへ顔を向けた。応援していた姉の梨紗子が泣いている。日の丸を掲げて笑顔でマットを1周した妹も、すぐに泣き顔になった。「本当に夢みたい。ずっと憧れていた舞台で理想の金メダル。最高の一日になった」と感極まった。
2年前の世界選手権を制したティニベコワとの決勝で、一歩も引かなかった。第1ピリオド、1点を先制された直後に片足タックルを仕掛け、バックを取って逆転。後半も組み手争いで常に主導権を握り、4-1とリードを広げる。終盤に1点差に迫られても、余裕を持って逃げ切った。危なげない試合運びだった。
これまで世界選手権では2位が最高。最も大きな舞台で、世界の頂点へ。「あとちょっとのところで負けてきたので。ずっとずっとマット一周がしたかった」。表彰台でまた、顔を覆って泣いた。
何でも吸収が早い姉と比べ、「私は鈍くさい」と自己分析する。しかし、梨紗子がリオデジャネイロ五輪で金メダリストとなってからは「少しでも追い付きたい」と意識を変えた。姉を手本に組み手を磨き、基礎練習を積み上げて肉体を強化。五輪の1年延期もプラスにし、さらに鍛錬を重ねた。「私のレスリングは特長がない」と言っていたが、もう世界女王に勝ち切れるだけの高い実力が備わっていた。
姉と肩を並べた妹は「あしたは梨紗子の決勝が残っている。いい形でつなげられた」。目標に掲げてきた「姉妹金メダル」へ、今度は姉に声援を送る。