川井友香子、憧れの姉を追いたどり着いた「金」


五輪を意識し攻める姿勢に変化、姉の梨紗子につなぐ

川井友香子、憧れの姉を追いたどり着いた「金」

女子62キロ級決勝で金メダルを獲得し、ガッツポーズする川井友香子=4日、千葉・幕張メッセ

 「いつかは姉に追い付きたい」。漠然と抱いていた夢を現実にした。レスリング女子62㌔級の川井友香子選手(23)=ジャパンビバレッジ=が金メダルを獲得した。準決勝を突破し連覇を狙う姉、梨紗子選手(26)の背中を追ってたどり着いた五輪の舞台。「一番理想としていたメダルが取れうれしい」。姉へたすきをつないだ。

 「梨紗子が動なら、友香子は静」。母初江さん(51)は2人をこう表現する。友香子選手は3姉妹の真ん中。手芸やお絵かきが好きで、いつも初江さんの後ろを付いて歩いていた。小学2年でレスリングを始めたのも、母がコーチをする教室に姉と妹が先に通っていたため、入れば母に「構ってもらえる」と考えたから。

 姉を追ってレスリングの名門至学館高校、大学(いずれも愛知県)へ行ったが、闘志を表に出さない性格はそのまま。格下相手にもためらいが見え、監督の栄和人さん(61)は「もっと攻めないとだめ」と檄(げき)を飛ばした。「失点もしないが得点もできない子」だった。

 梨紗子選手がリオデジャネイロ五輪で頂点に輝く姿は、客席から眺めた。この舞台に立ちたいという気持ちは芽生えたが、金メダリストの姉は「選手として懸け離れている」としか思えなかった。

 変化が訪れたのは2018年。東京五輪が近づき、「目に見えて意識が変わり、チャンピオンへの道を歩み始めた」(栄さん)。試合で攻める姿勢が表れ、体つきも変わった。同年の世界選手権銀メダル獲得で誓った「姉妹で出場」は、続く19年の銅メダルで「姉妹で金メダル」に変わった。

 「友香子、ちゃんと見てるよ」。姉の声援が響く会場で挑んだ決勝の舞台。勝利が決まるとマットにうずくまり、その後、両手を天に突き上げた。5日の姉の決勝を今度は、金メダリストとしてスタンドから見守る。