10歳の頃の金メダルの夢「ひみつの計画書」


入江聖奈選手、「普通の子」が積み重ねた努力で頂点へ

10歳の頃の金メダルの夢「ひみつの計画書」

ボクシング女子フェザー級決勝、金メダルを獲得し喜ぶ入江聖奈選手(右)=3日、両国国技館

10歳の頃の金メダルの夢「ひみつの計画書」

小学5年の入江聖奈選手=2011年、鳥取県米子市(母・マミさん提供)

10歳の頃の金メダルの夢「ひみつの計画書」

小学生だった入江聖奈選手が書いた「ひみつの計画書」(母・マミさん提供)

 ボクシング女子フェザー級の入江聖奈選手(20)=日体大=は10年前、「ひみつの計画書」に五輪で金メダルを取ると記した。漫画に触発され競技を始めた「普通の子」が、積み重ねた努力で夢を実現させた。

 ボクシングを始めたきっかけは、家にあった1970年代の人気漫画「がんばれ元気」。新聞紙で作ったグローブでこっそり練習したが、我慢できなくなった。「漫画と実際にやるのとは違う」と反対する母マミさん(48)を押し切り、地元の鳥取県米子市内に一つだけあったシュガーナックルボクシングジムに小学2年で入会した。

 「惰性で続けていたら東京五輪の招致が決まり、やめられなくなった」と話すが、実は小学生で既に「世界一」を目標にしていた。「16歳から国体などで活躍し国際舞台へ。2020年には五輪代表として金メダルを取る」。10歳の頃、「ひみつの計画書」と題するノートに記した内容だ。

 一度決めた目標はやり抜くがんばり屋。中学では陸上部に入り、早朝と帰宅後にボクシングを練習した。日々の練習日記もつけ課題を洗い出し、さらに深夜までの勉強。疲れ果て、ミット打ちの最中に寝てしまうこともあった。

 幼少時から指導する伊田武志さん(55)は、「普通の子が10年先を見据え、努力だけで全てのテクニックを身に付けた」とたたえる。五輪代表の選考試合に備えた特訓を、泣きながらやり抜いた姿に勝利を確信したという。「大丈夫。あれだけ努力して負けるわけがない」。大舞台のリングでまな弟子に掛ける言葉も決めていた。

 名前の由来は、自動車F1の元世界王者アイルトン・セナ。攻撃的なボクシングスタイルからジム仲間は、どう猛さで知られる「イリエワニ」と呼ぶ。

 「気が付いたら着替えてた。現実ですか?」。試合後に金メダルの感想を聞かれ、問い返した入江選手。あだ名そのままに打ち合いを挑み、世界の頂点に立った。