ボクシングの入江聖奈、有効打を重ねて金メダル
日本女子初出場の競技で金、ジャブを磨き文句なしの勝利
女子フェザー級決勝の選手入場。入江聖奈(日体大)はいつも通りの笑顔だった。五輪出場権をつかんだ2020年のアジア・オセアニア予選から続ける験担ぎ。しかし、「内心は緊張してほっぺが引きつっていた」。
ボクシングは小学2年で始めた。一日2時間、3時間とパンチの反復練習を繰り返した。「ジャブは誰にも負けない自信がある」。買い物袋を左手で持って手首を鍛え、中学時代は陸上部の練習後にもミットをたたいた。
19年世界選手権覇者のペテシオ(フィリピン)は距離感を惑わせようと、構えを左右にスイッチしてきたが、動じない。持ち味のジャブを打ち込み、きれいに相手の顔面をとらえた。1回は5人のジャッジ全員が入江を支持した。
近距離で強打を振る作戦に変えたペテシオに押され、2回を終えほぼ互角のポイントになった。3回も打ち合いになったが、カウンターを合わせるなど、より効果的なパンチを当てたのは入江。再びフルマーク。文句なしの勝利だった。
お互いのパンチが交錯する状況では、有効打は評価されづらい。だから入江はジャブを基本としつつ、ノーモーションで右をたたき込んだり、相手の打ち終わりに合わせたりと、印象に残るボクシングを遂行しようとした。卓越したハンドスピードを持つ入江は、それが可能だった。
表彰台で君が代を聞いた瞬間、目頭が熱くなった。「世界一になったんだなって」。明るく前向きな性格で、よく冗談も言う。
好きなものはカエルとテレビゲームだ。「ボクシングをしている女子は、凶暴な人を想像してしまうかもしれないけど、そんなことはない。イメージを払拭(ふっしょく)できたらうれしい」。そう言って、白い歯を見せた。