一丸でつかんだ日本フェンシング界初の快挙
流れ変えたリザーブの宇山賢、危機を乗り越え一気に頂点
まさに一丸でつかんだ日本フェンシング界初の快挙だった。30日の男子エペ団体。個人戦で振るわなかった日本勢はあわや初戦敗退の危機を乗り越え、強豪を次々と破って一気に頂点へ。1964年東京、2004年アテネを超え、日本選手団最多を更新する今大会17個目の記念の金メダルだった。
硬さが見られた初戦の米国戦は、2人を残して6点ビハインドの大ピンチ。ここで34歳のエース見延和靖選手(ネクサス)に代わり起用されたのが、リザーブの宇山賢選手(三菱電機)。心の準備をしていた宇山選手は、「試合の流れを変えることだけをイメージした」。その言葉通り、変幻自在の突きで2点差に詰め寄り、アンカー加納虹輝選手(JAL)の逆転劇につなげた。
勢いに乗った日本は、準々決勝で五輪3連覇中だったフランスを撃破。2点を追う苦しい展開でピスト(試合場)に立った加納選手は、すばしこい動きで元世界王者のボレル選手を攻めて逆転勝ち。準決勝の韓国戦、決勝のロシア・オリンピック委員会(ROC)戦は終始リードを保ち、危なげがなかった。
初戦の途中から応援に徹した見延選手は、「納得しているし、金メダルの喜びの方がはるかに大きい」とすがすがしい表情。「お互いに支え合って戦ってきた。チームワークは最高の状態」という加納選手の言葉は、決してきれい事ではない。
北京五輪後に就任したウクライナ人コーチによって能力を引き上げられた見延選手が、国際舞台で活躍。23歳の加納は、「見延さんがやっているから、僕もやれると思った」。山田優選手(自衛隊)も「この人がいるチームで金メダルを取りたかった」。表彰台の一番高い位置で、金メダルを首から下げた4人の笑顔が輝いた。