ドゥテルテ大統領、米軍地位協定の維持を決定
米国防長官と会談直後に破棄を撤回、中国への抑止力に
フィリピンのドゥテルテ大統領は、米国との間で懸案になっていた「訪問米軍に関する地位協定(VFA)」を維持することを決めた。自身が昨年、協定の破棄を打ち出していたが、撤回した。ロレンザーナ国防相が30日、記者会見で明らかにした。
ドゥテルテ大統領は29日夜、訪比したオースティン米国防長官と会談し、直後に破棄を撤回。両国の軍事同盟に深刻な亀裂が生じる事態が回避された。南シナ海の軍事拠点化を進める中国に対する一定の抑止力となりそうだ。
ロレンザーナ国防相は会見で、「協定は再び有効だ。何事もなかったかのように撤回された」と強調。同席したオースティン長官は「前進する確信を一定程度得られた」と述べた。
協定はフィリピンに駐留する米軍の法的地位を定めたもので、1998年に締結された。比米同盟を機能させる重要な取り決めで「合同演習や双方の寄港をはじめ約300の軍事協定に関係する」(米政府高官)。
一方、殺人容疑者となった米兵の拘束を拒まれた事件があり、フィリピンでは「不平等だ」と批判が根強い。ロレンザーナ国防相は、米兵の拘束に関する補正が行われると明かした。
ドゥテルテ大統領は、米国の「内政干渉」に反発する形で2020年2月に破棄を通告。半年後に失効する予定だったが、同6月に「破棄の凍結」が発表された。凍結の理由について、ロレンザーナ国防相は「新型コロナウイルスと闘うには他国の協力が必要だ」と説明していた。在マニラ米大使館によると、米側は今月中旬までに14億¥外字(b3b8)(約30億円)の新型コロナ対策資金を供与した。(マニラ時事)