日銀、「複合災害」への対応めぐり異例の対立


11年上期の議事録公開、国債引き受けは「愚行」と反発

日銀、「複合災害」への対応めぐり異例の対立

金融政策決定会合のため、日本銀行本店に入る白川方明総裁(当時)=2011年4月、東京・日本橋本石町の日銀本店(時事)

 日銀が30日公表した2011年1~6月の金融政策決定会合議事録では、地震、津波、原発事故など「複合災害」への政策対応をめぐり、執行部内でも異例の対立が起きていたことが浮き彫りとなった。一方、復興財源確保のために浮上した国債引き受け論に対しては反発が続出。未曽有の危機を前に中央銀行が果たす役割の模索が続いた。

 東日本大震災から約1カ月半後の4月28日の会合。西村清彦副総裁(肩書は当時、以下同)は「震災と原発事故は(生産・物流など)供給面だけでなく、需要面にも相当長期にわたる影響を与える」と危機感を強調。企業・消費者マインドの一段の悪化を防ぐため、3月会合で増額した資産買い入れなどの基金をさらに5兆円程度増やすべきだと訴えた。

 これに対しもう一人の副総裁、山口広秀氏は「不確実性が特に高い経済情勢のもとでは、政策効果を一つ一つ見極めながら運営を図る『漸進主義』が基本になる」と主張。結果として西村氏の提案は反対多数で退けられ、次の会合では提案自体が見送られたが、有事の金融政策運営に関する基本姿勢に執行部内で大きな乖離(かいり)があった。

 一方、日銀を取り巻く外部環境は厳しさを増していた。当時政権を担っていた旧民主党内には復興財源を賄うため、財政法で禁じられている日銀による国債の直接引き受け論が浮上。4月7日の会合で、白川方明総裁が「(過去には)便利であるがゆえに歯止めが利かなくなり、激しい通貨安やインフレをもたらした」と警告すると、亀崎英敏審議委員も「破滅の道をたどるような愚行は絶対に避けなければならない」と強く反発した。