卓球の伊藤美誠、うれしくて悔しい銅メダル
シングルスのメダルは日本女子初、快挙も高い中国の壁
うれしいけど、悔しい銅メダル。伊藤が日本女子で初めてシングルスのメダルを獲得し、卓球界の歴史に名を刻んだ。ただ、目指していたのは頂点。金メダルに輝いた混合ダブルスのようには、中国の牙城は崩せなかった。「勝っても悔しい気持ちが強くて、うれしい気持ちは薄いかな。金以外は一緒だと思う」
リオデジャネイロ五輪から5年。松崎太佑コーチと二人三脚の練習で力を蓄えた。サービスやレシーブなど常に進化を求め続ける伊藤。その取り組みを尊重しつつ、既にある長所を松崎コーチは消さないように指導した。話し合いながら、互いに納得するまで練習は続く。五輪1カ月前になっても、朝から深夜まで練習場にいることもあったという。
そんな努力を重ねた伊藤は2019年以降、国際大会で中国選手以外の外国勢に負けていない。卓球王国に対抗できる唯一の存在で、相手の脅威にもなっている。しかし、大舞台で底力を見せるのが中国勢。五輪ではワールドツアーのようにはいかなかった。
準決勝は同じ20歳のライバル、孫穎莎にストレート負け。持ち味を発揮して相手を崩した第2ゲームで9-3とリードしたものの、逆転で奪われて勝利は遠のいた。伊藤の代名詞でもある多彩なサービス、さまざまな回転をかけるレシーブはともに読まれ、パワーで勝る相手にラリーの主導権も握られた。「0-4で惜しくもなかったので、すごく悔しい。調子は悪くないけど、これが実力」。潔く完敗を認めた。
世界の女子卓球界では、中国に対抗できる選手は伊藤以外にいない。今後もマークはどんどん厳しくなるだろう。しかし、負けず嫌いで「できないと思われていることをやりたい」というのが伊藤。悔しさを糧にして、さらに強さを求めていくはずだ。
3歳になる直前に卓球を始めた時から、目標は「世界一の選手」。残る団体戦にすべてを注ぐつもりだ。「私が全勝してチームにいい流れを持ってきたい」。シングルスでのてっぺんは3年後のパリで目指す。