体操男子個人総合、橋本大輝が有言実行で頂点に
気持ちを切り替え自信あふれる演技、鉄棒で一気に逆転
19歳の橋本が世界の頂点へと上り詰めた。内村が2大会続けてきた、日本勢の個人総合金メダルを死守。「世界に僕の強さを知らしめたい」。まさに有言実行。13年前に同じ19歳、大学2年で初の五輪に臨んだ内村の銀メダルを超えた。
若くして各種目で高難度の技をそろえ、Dスコア(演技価値点)は世界屈指。リオデジャネイロ五輪後の世界王者ナゴルニー(ROC)、肖若騰(中国)らと互角以上まで高めていた。出来栄えを示すEスコアで上回れるかが勝負だったが、予選、団体総合決勝を通してミスなし。個人総合決勝でも自信にあふれた演技で得点を積み重ねた。
わずか2年前。高校3年で初めて代表入りした世界選手権で目の色が変わった。この時は個人総合に出場しなかったにもかかわらず、大会後に「優勝したナゴルニーはDスコアが36点台。自分はそこで負けている」と既に頂点へ意識を向けていた。五輪が1年延期されたことも橋本には幸いした。2年間の急成長で世界王者を追い越した。
3種目目のつり輪で想定していた得点を取れなかったが、「焦ったけど、試合は何が起こるか分からない。そこはしっかり切り替えた」。精神面のタフさがあった。最後は得意の鉄棒。「ここを通し切れば、楽しい試合になる」と逆転への自信を胸に演技し、2人の世界王者を一気に抜き去った。
勝負強さや鉄棒での強さなど内村との共通点はあるが、ダイナミックなあん馬などでさらに雄大さを加え、優劣ではなく内村と違った印象の体操を披露した。「内村2世」ではなく「橋本」。世界の体操界に自身の名を刻み付けた。