上野由岐子選手、13年間なお進化して連覇達成


コロナ禍で練習に没頭し新発見、生まれ変わったエース

上野由岐子選手、13年間なお進化して連覇達成

ソフトボール決勝の米国戦で力投する上野由岐子選手=27日、横浜スタジアム(時事)

 決勝の相手は、北京五輪と同じ米国。「イメージ通り。相手のことは分かっているし、冷静でいられる」。13年の時を経て、再び最大のライバルと相対した上野由岐子選手。不動のエースが、悲願の連覇達成の喜びに浸った。

 大黒柱としての頼もしさは変わらなかったが、今大会で決勝までたどった足取りは、前回の優勝とは大きく違う。先発した1次リーグの3試合で完投なし。39歳の誕生日だった22日に七回途中降板となったメキシコ戦後には「体はいっぱいいっぱい。39歳をリアルに感じた」と漏らした。北京では決勝戦までの2日間で3試合を投げ抜き、「上野の413球」と評された26歳当時と比較すれば、体力的な衰えは避けて通れなかった。

 「年齢的にも(練習を)やったらうまくなる年じゃない」。2年前にはそう口にしたこともある。スタミナが落ちた分、いかに知識や経験でカバーするか。技術をどう上げるかよりも、いかに維持するか。いつしかそれが選手生活を継続するテーマになっていた。

 新たな発見があったのは、五輪の1年延期で揺れた昨年春。コロナ禍で日本リーグの試合も中止となり、練習に没頭した。「今からでもうまくなれるんだと気付けた。神様が、現状維持で満足するなという時間をくれたのかな」。新しい球種に挑戦し、練習にヨガを取り入れた。芽生えた探究心が活力になった。

 経験を積み重ね、精神的にも成長した。「若い時は体力があったけど、その分考え方は幼稚で甘かった」。身に付いたのは、どんな困難にも前向きに立ち向かうタフさや、後輩に寄り添う優しさ。背中を追いかけ続けてきた藤田倭選手は「昔は黙々とやっている印象。今はしゃべりやすくて、親しみやすい雰囲気をつくってくれる」と変化を語る。

 「13年前と同じパフォーマンスはできないかもしれない。けれど、違った自分を表現していけたらいい」と臨んだ東京五輪。培ったすべてをぶつけてつかんだ二つ目の金メダルは、積み上げた月日の分だけ重く、輝きを放つものになった。