結果を積み上げ恐怖心を克服、堂々と戦い「銅」


「未知の行ってみたい」舞台、初の五輪で光った勝負度胸

結果を積み上げ恐怖心を克服、堂々と戦い「銅」

柔道女子57㌔級の芳田司選手(左)=26日、日本武道館(時事)

 「ここを目指しているのか」。柔道女子57キロ級の芳田司選手(25)=コマツ=は、付き人として同行した5年前のリオデジャネイロ五輪で気おされ、怖くて震えが止まらなかった。結果を積み上げることで恐怖心を克服。初の五輪は堂々たる戦いぶりで、銅メダルを獲得した。

 母千代さん(51)によると、芳田選手は「疲れてもらわなくては困るぐらいパワフルな子」だった。幼稚園児の頃から毎日、父善英さん(51)、2歳上の姉優さんと自宅近くの京都御所を早朝ランニング。小学2年から柔道を始めると、のめり込んだ。

 小学校卒業を控えた時期、父と柔道私塾・相武館吉田道場(相模原市)を見学し、コマツで先輩になる1学年上の田代未来選手(27)と出会った。最終の新幹線での帰路、「私、あそこに行きます」ときっぱり。帰宅し、「お母さん、決めた」と告げた。

 娘を一人で送り出す切ない親心に応えるように、入門後は「この道でやっていく」と思い定めた。田代選手や同学年の渡名喜風南選手(25)らと切磋琢磨(せっさたくま)の日々。女子柔道名門の敬愛高校(北九州市)、コマツへの進路も自分で決めた。

 しかし、夢に見た五輪は想像以上だった。

 田代選手の付き添いでリオ入りした芳田選手は、アップ会場の張り詰めた空気にのまれた。選手一人ひとりが発するプレッシャー。いつになく緊張する先輩。「もし自分がここにいたら」「ここを目指しているんだよな」。そう考えると「すごく怖くなって、ずっとブルブル震えていた」。

 自信が付いたのは、2回目の出場となった2018年世界選手権だ。「私がやらないで誰がやるんだ」。使命感と気迫で勝ち進み、初優勝した。夢から目標へ、「未知の行ってみたい」舞台に変わった東京五輪。準決勝で破れ、目標の金メダルに一歩届かなかったが、得意の内股に加え、強化してきた担ぎ技も繰り出す勝負度胸が光った。