「希望捨てない」、友と再会して涙で抱き合う
静岡県熱海市伊豆山の土砂崩れ、避難住民がホテルに移動
静岡県熱海市伊豆山の土砂崩れで、体育館などの避難所に身を寄せていた住民は4日、市が手配した「熱海ニューフジヤホテル」(同市)にマイクロバスなどで移動した。設備の整った宿泊施設に移り、ほっとした表情を見せる一方、知人の安否が分からない人も多く、「希望を捨てずに頑張ろう」と励まし合う姿もあった。
次々と避難者が到着するホテルの入り口には、カップ麺や水、おむつなどが入った段ボールが積み上げられた。車いすの高齢者や、犬を連れた家族も。友人との再会に涙を流して抱き合ったり、安否不明の知り合いを気遣ったりしていた。
家族で避難した小澤アンジェリータさん(69)は、屋根づたいに近くの神社まで逃げ、警察官から避難時に「頑張れ。もう少しだ」と励まされたという。ただ、「1週間は雨が降るね」と最後に話した鮮魚店の男性と連絡が取れず、近隣住民と「希望を捨てないで頑張ろうと励まし合っている」と話した。
「九死に一生を得た」。川口紗希さん(29)の腕には、避難時にできたあざや傷が生々しく残っていた。「ドン」と音がして、不思議に思いながら自宅の窓を開けた瞬間、土砂が流れ込んできた。身動きが取れなくなったが、割れた屋根から隣家のベランダに逃れ、助かったという。
土石流が押し寄せた国道135号では、雨の中、ホテルへ移動する住民が送迎バスを待っていた。
国道沿いにある自宅の1階部分に、押し流された乗用車が突っ込んだという中田修裕さん(60)は、母や妻と近くの避難所で一夜を過ごした。「また土石流が起きて孤立したら何もできなくなる」と自宅に戻ることをあきらめ、ホテルへの移動を決めた。同級生や知人の親戚の安否が分からないといい、「家が発生現場に近いから厳しいのかな」と肩を落とした。