飯塚幸三被告、遺族に「怒り理解も過失ない」


東京地裁で池袋暴走事故の公判、被害者遺族が直接質問

飯塚幸三被告、遺族に「怒り理解も過失ない」

飯塚幸三被告への被告人質問後、記者会見する遺族の松永拓也さん=21日午後、東京都千代田区(時事)

 東京・池袋で2019年4月、母子2人が死亡、9人が重軽傷を負った乗用車暴走事故で、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(90)の公判が21日、東京地裁(下津健司裁判長)であり、被害者遺族による被告人質問が行われた。飯塚被告は「遺族の怒りは十分理解している」と述べながらも、「過失はなかった」と繰り返した。

 被害者参加制度に基づき出廷した松永拓也さん(34)は、亡くなった妻の真菜さん=当時(31)=と娘の莉子ちゃん=同(3)=の名前を知っているかと切り出した。「公判で2人の名前を一度も言わなかった理由は」と問われた同被告は「今までそういう機会がなかった」と語った。

 無罪主張は変わらないのかとの問いには、「心苦しいとは思うが、過失はないものと考えている」と強調。「暴走状態になった車を止めることができず悔やんでいる」とし、「理由はどうあろうと2人が亡くなった事実は変わらない。遺族の怒りは致し方ないと思う」と述べた。

 続いて質問した真菜さんの父、上原義教さん(63)は「立派な仕事をして生きてきたのに、自分の過ちを認めないのか。悲しくて苦しい」と涙ながらに訴えた。被告は「自分が車を出さなければ事故は起きず、2人の命は大丈夫だった。本当に申し訳なく思います」と答えた。

 公判終了後に記者会見した松永さんは「心を鬼にして質問したが、被告の口から真実を述べてほしいという夢は破れた。刑務所に入ってほしい」と語気を強めた。