ワクチン年少者接種に抗議殺到、背景にSNSか


戸惑う自治体、「子供のため」過激化、脅迫めいた内容も

ワクチン年少者接種に抗議殺到、背景にSNSか

新型コロナウイルスワクチンの子供への接種が始まる自治体に、電話で抗議するよう呼び掛けるフェイスブック上のグループ(フェイスブックより・時事)

 年少者への新型コロナウイルスワクチン接種が始まった自治体に、抗議の電話が殺到している。ワクチンのリスクを過度に警戒する人たちがインターネット交流サイト(SNS)で呼び掛け、集団で電話しているとみられ、中には脅迫めいた内容も。対応に追われ業務が滞る役場も多く、担当者は「接種は強制ではないのに」と頭を抱える。

 厚生労働省は今月から、米ファイザー製ワクチンの接種対象を16歳以上から12歳以上に拡大した。これを受け、京都府内のある町では希望した12歳が接種を受けたところ、町外から抗議電話が殺到。「10代は死亡事例がないのに」「ワクチンの危険性を認識しているのか」といった内容のほか、「人殺し」「殺すぞ」とののしるものもあり、町は警察に相談した。

 高校生への優先接種方針を示した北海道や愛知県の自治体にも、同様の電話やメールが相次いだ。他にも小中学生に集団接種を行うと表明した岡山県の市など、抗議対象は全国に広がりつつある。

 SNS上では、ワクチンに懐疑的な人同士がつながり、自治体への抗議を呼び掛けている。フェイスブック上で反対運動を展開するグループには14日時点で800人超が参加。抗議する自治体名や電話番号が共有され、参加者は「子供たちのためなら頑張れる」「県内の人のふりをして、所構わず抗議しましょう」などと投稿していた。

 早稲田大の田中幹人教授(科学技術社会論)は、副作用を警戒する人たちがSNS上で同じ意見の人の投稿ばかりを目にするうち、極端な反ワクチンの考えに陥っていくケースがあると指摘。「コロナ禍による社会不安やストレスもこうした考えが広まる背景にある。一方的に否定しても逆効果なので、不安を丁寧に聞き取りながら、正確な情報の発信を積み重ねていくしかない」と語った。