非接触が好評を博す、 広がる「食品の無人販売店」
無人ゆえの被害も、成功事例が作れれば外食産業の発展に
ギョーザや焼き鳥、牛ホルモン…。新型コロナウイルス禍で飲食店の廃業が相次ぐ中、食品の無人販売店が売り上げを伸ばしている。着想は郊外にある野菜直売所。人件費抑制に加え、非接触というメリットもあり、新規開店した経営者は「成功事例が作れれば外食産業の発展にもつながる」と意気込む。
東京・恵比寿に5月、24時間営業の和牛ホルモン専門店「naizoo(ナイゾー)」がオープンした。約5坪の店内に従業員はおらず、商品が入った大型冷凍庫とキャッシュレス決済用のタブレット端末が目を引く。監視カメラ3台の下、客は商品を選び自ら会計を済ませる。
27日昼、仕事の合間に来店した千葉県松戸市の運送業鈴木春夫さん(68)は「店員に話し掛けられず楽。抵抗なく決済できた」と笑顔を見せた。社長の蒲池章一郎さん(37)は昨年6月、経営する居酒屋7店舗をすべて売却した。今は主に冷凍商品だけで1日約6万円を売り上げる。
店舗数を伸ばし続ける業者もいる。全国展開するギョーザ専門店「餃子の雪松」(東京都)は、国内でコロナ感染者が初確認された昨年1月以降、支店数を19店から161店(5月末時点)へと急拡大させた。工場併設の2店以外はいずれも無人店舗だ。無人販売は2年前から始めていたが、担当者は「コロナの影響があったのでは」と拡大要因を話す。冷凍ギョーザ36個入り(1000円)の1商品のみで会計も簡単。「店内に人が滞留せず、密にならない」と好評という。
無人ゆえ、盗難被害に遭った店も。宮城県石巻市の「やきとり翔輝」では2月、ねぎま4本(500円)などを扱う無人販売機から2回にわたって計5000円分の商品が盗まれた。草野雄太代表(40)によると、それでも「無人販売を始めた昨年7月以降、売り上げはほぼ毎月、前年超え」で、平日は店頭の販売機のみを稼働させる。「飲食店はやめるかどうかの瀬戸際。連絡をもらえればノウハウを伝える」と呼び掛けている。