キタゾウアザラシ、1日20時間超は餌を取る必要
国立極地研などが突き止める、繁殖期に備えて懸命に太る
北太平洋に生息するキタゾウアザラシの雌は、1日20時間以上餌を取り続けなければ太らないことを、国立極地研究所などの研究チームが突き止めた。論文は29日までに、米科学誌サイエンス・アドバンシズに掲載された。
体重350キロになるキタゾウアザラシの雌は、絶食状態になる繁殖期に備え、1年の半分以上を深海で餌を食べて体脂肪を蓄える。チームは2011~18年、米西海岸で48頭の雌の頭部に小さな加速度計とカメラを装着。口の開閉を検知して餌取りの瞬間を記録し、生態解明を試みた。
その結果、水深500メートル前後まで潜り、小魚を捕食していたことが分かった。浅瀬よりも小魚が豊富な深海を餌場にしていると考えられる。平均20分潜っては数分間の息継ぎを繰り返し、丸1日潜り続けることもあった。
太ると浮きやすくなることに着目し、深度データから体脂肪の増加率を算出。餌取りに費やす時間を基に分析した結果、太るためには1日に20時間以上餌を取り続ける必要があると分かった。
英セントアンドルーズ大の安達大輝研究員(元極地研特任研究員)は「キタゾウアザラシは餌取りをさらに長くする余裕がなく、餌の減少に弱い」と分析。キタゾウアザラシの観察結果から、気候変動が深海に及ぼす影響を探ることができると指摘した。