飲食店から悲鳴、「もう限界」「効果あるのか」


緊急事態の延長決定、五輪に懸念も、医療関係者は当然視

飲食店から悲鳴、「もう限界」「効果あるのか」

酒類の提供を再開した飲食店「らーめん匠力」=28日午後、東京都渋谷区(時事)

 東京、大阪など9都道府県に発令中の緊急事態宣言の延長。「もう限界」「効果あるのか」。28日、長期化する時短営業に飲食店は悲鳴を上げ、東京五輪の会場周辺では大会開催を懸念する声が聞かれた。新型コロナウイルス感染者のケアに忙殺される医療関係者は、宣言延長を「当然だ」と受け止めた。

 「正直者がばかを見る。もう耐えられない」。東京都渋谷区のラーメン店「らーめん匠力」では、店長の田中宏昇さん(30)が憤りをあらわにした。宣言への協力を続けてきたが、「さらにもう1カ月近く我慢するのは本当に厳しい」と酒の提供を再開した。

 時短営業の協力金は5カ月が過ぎても振り込まれず、酒を提供する飲食店も周囲に増えてきた。売り上げもコロナ前の半分まで落ち込んでおり、「限界だ。家賃や従業員の生活もある」と語気を強めた。

 延長期間中の6月13、14両日に聖火が回ってくる北海道。公道でのリレーは中止され、式典だけが開催される見通しだ。

 東京五輪のマラソン会場がある札幌市の主婦(61)は「外出自粛を求めているのになぜ式典なのか。そもそも五輪開催をやめるべきだ」と不満を漏らした。医療事務の男性(50)は「感染者が減るのか」と宣言の効果を疑問視するとともに、さらなる強い措置の必要性を訴えた。

 厳しい医療環境の中、今も500人以上の感染者が入院を待つ兵庫県。神戸市で、自宅待機の患者を訪問する看護師の難波千恵美さん(56)同市西区は、宣言延長を「当然だと思う。第5波が来たらもう病院は持たない」と話した。

 所属する訪問看護ステーションは3月以降、看護師4人で170人以上の患者をケアしてきた。危険な状態でも搬送先が数時間見つからないことも多く、「誰も死なないよう毎日祈っていた」と振り返る。今も医療は逼迫(ひっぱく)しているといい、「人の動きをすべて止められないのか」と政府に注文を付けた。