新型コロナ禍で、キッチンカーにも深まる苦境
自治体による出店規制、相次ぐ催事中止も追い打ちかける
新型コロナウイルスの感染拡大で、オフィス街やイベント会場などで食事を提供するキッチンカーが苦境に立たされている。在宅勤務の普及でオフィス街の顧客が減少。緊急事態宣言を受けて自治体が出店場所を制限したほか、相次ぐイベントの中止も追い打ちを掛ける。
「出店できる場所が減った」。野菜を使ったスープが人気のキッチンカー「ぽた~じゅ屋」は4月の宣言発令以降、東京・丸の内のオフィス街で営業できなくなり、売り上げの2割以上を失った。自治体の要請で、ビルなどの施設管理者が出店を禁止したためだが、経営する大嶋敦志さん(40)は「利用者が屋内の飲食店に集中して密状態になるだけだ」と対応に首をかしげる。
クレープ販売のキッチンカー「SMAPPYCAFE」を運営する秋元未来さん(38)も逆風に苦しむ。昨年1月、夫が仕事を手伝ってくれることになり、キッチンカーを新たに1台購入した直後にコロナが拡大した。年間約65日は出店していた祭りや花火大会などのイベントは、ほとんどが中止に。食材の仕入れやガソリン代などを払うと手元に残る資金はわずかで、車の購入代金や融資の返済が重くのしかかる。
時短営業要請に応じた飲食店には自治体から協力金が出るが、キッチンカーは原則として対象外。コロナ禍で売り上げが落ち込む中、「少しでも穴埋めをしてほしい」と訴える業者は多い。
営業できる場所の新規開拓を進めるなど、難局を乗り切ろうとする動きも広がる。業界団体「移動販売オーナーズ協会」(東京)の嶋田徹事務局長は「高齢者施設や社員寮から出店依頼の問い合わせもある。機動力を生かして新たな販路を開拓したい」と話した。