照ノ富士、むき出しの闘志で優勝決定戦を制す
21場所ぶりに返り咲いた大関で初の賜杯、7月は綱とりへ
右からかちあげ、まわしにこだわらずに攻めた照ノ富士。前に出ようとする貴景勝をはたき込んで土俵にはわせた。昨年11月場所の決定戦で敗れた相手に雪辱し、21場所ぶりに返り咲いた大関の地位で初の賜杯を抱いた。
勝てば優勝の結びは、立ち合いで体を起こされ、引き技にあっけなく膝をついた。今場所で初の連敗。さらに決定戦は過去3戦全敗と苦手にする中、「いつも通りやってきたことを信じて」土俵に上がった。安定感を増した右四つで前に出る相撲からは遠かったが、むき出しの闘志で優勝を手繰り寄せた。
7月の名古屋場所で綱とりに挑む。鶴竜が3月の春場所で引退し、白鵬も休場が続く。令和初の横綱誕生に期待は高まるが、照ノ富士は「なりたいからといってなれるものではない」と冷静だ。今場所の前に師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「どこまで頑張れるか分からない」と不安を吐露。古傷を抱える膝が万全ではない中、気持ちも奮い立たせて白星を重ねてきた。
長い回り道の末に、29歳で再び最高位への挑戦権を手にした。「最後に引退するとき、全てを出し切ったと自分で満足したい」。優勝の余韻に浸ることなく、静かに覚悟を示した。