改正少年法が成立、「メディアは高い倫理観を」
特定少年の実名報道が可能に、識者や更生支援者らに聞く
改正少年法が21日、成立した。これまで禁止されてきた非行や罪を犯した少年の名前や写真、住所などを報じる「推知報道」も、起訴された18、19歳の「特定少年」については来年4月の施行から可能となる。少年事件の報道はどうあるべきか。識者や更生支援に携わる人々に聞いた。
山田健太専修大教授(言論法)は「今回の改正は、推知報道を『やってもやらなくてもよい』と中途半端に容認した。報道機関は倫理観をより高く持つ必要がある」と話す。これまで一律禁止されてきた背景には、少年は未成熟なため社会全体で責任を負うべきだとする考え方や、更生と社会復帰を重視してきたことがあると指摘する。
改正法では18、19歳も少年法の対象となるのは維持した上で、起訴後は推知報道を可能とするなど他とは異なる扱いを設けた。山田教授は「18、19歳も未熟な存在という法構造は残っており、匿名にする意味はなおある。報道機関は機械的に実名報道するのではなく、ケース・バイ・ケースで匿名にするなどの判断が必要だ」と注文を付けた。
20年間で約140件の更生に携わり、多くの少年と関わってきた東京都江東区の元保護司中澤照子さん(79)は「厳しくなることでブレーキにはなると思う」と法改正自体は評価。ただ、少年法を理解する少年はほとんどいないとし、「少年は深く考えず犯罪に関わることがある。制度が変わることが少年の耳に入るよう、きめ細かく報じてほしい」と求めた。
「インターネットで他人の名前を検索する人は多く、学校、就職、結婚など生きること全てに影響してくる」と懸念するのは、少年院出院者らの就職などを支援するNPO法人「なんとかなる」(神奈川県横須賀市)の岡本昌宏共同代表(46)。被害者のことを考えると推知報道には賛成も反対もできないとした上で、報道するなら実名を出す理由を説明する必要があると語った。