奈良・菅原遺跡で発見、高僧行基の供養施設か
回廊と塀で囲まれた建物跡、「長岡院」の位置とも一致
元興寺文化財研究所(奈良市)などは20日、市内にある菅原遺跡で、大規模な回廊と塀で囲まれた円形とみられる建物跡が確認されたと発表した。推定される創建年代や建物の構造などから、東大寺の大仏建立に深くかかわった奈良時代の高僧、行基(668~749年)を供養した施設の可能性があるという。
発見された建物の遺構は、地面に推定16基の柱穴が円を描くように並び、内側には同心円状に石材を抜き取った跡がある。周囲に回廊と塀の跡が残り、建物の主に西側に回廊、東側に塀が巡らされていたとみられる。大きさは南北約38・5メートル、東西約36・4メートルと推定される。
同研究所によると、個人を供養する機能が指摘されている建築様式「円堂建築」だった可能性が高い。円形の多宝塔を想定するのが有力だが、詳しい構造はさらに研究が必要という。
創建は奈良時代中期の750年前後と推定され、749年に死没した行基をこの場所で供養していた可能性がある。遺跡の場所は、12世紀に編さんされた「行基年譜」に記述があるゆかりの寺院の一つ「長岡院」の位置とも一致するという。
日本建築史に詳しい奈良文化財研究所の箱崎和久・都城発掘調査部長は「東大寺大仏殿を望める丘の上の眺めの良い場所にあることからも、行基を祭る場所であったとの推定は十分可能だ」と話している。