北朝鮮のSLBM発射の狙い
5月8日、北朝鮮は同国東部の咸鏡南道・新浦近海で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)試験発射に成功したと報道した(9日、労働新聞)。専門家の間では疑問視する見方もあるが、北朝鮮の核戦力に対する過小評価とそれに基づく対北戦略の見直しを求める声も上がっている。
北朝鮮は2013年の第3次核実験以降、ICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBMに小型核弾頭を搭載できると主張している。今回の潜水艦発射弾道ミサイルは2007年に開発した射程3000㌔㍍級ムスダン中距離弾道ミサイル(IRBM)をSLBMに改良したものと推定する。
4月7日、米本土防衛を担う北方軍・北米航空宇宙防衛司部のゴートニー司令官は「北朝鮮は既に核兵器を小型化し移動式の大陸間弾道ミサイルに搭載する能力を有している」と述べた。筆者が海軍大学で学んだ「ミサイル戦略」に照らして見れば、今年2月の水上射出と水中射出実験の後、今回、潜水艦射出実験に成功したのが確実であれば、SLBM開発が70%水準に至っていると推定できる。
韓国は潜水艦を12隻しか保有していないが、北は潜水艦・潜水艇を73隻保有。2010年3月26日、韓国海軍の哨戒艦が北潜水艇の魚雷攻撃で撃沈された事が記憶に新しい。北朝鮮の強みは「核開発技術」「弾道ミサイル開発」「サイバー情報戦」であり、特殊部隊20万、長射程砲約350基、戦車約4000台を保有していることだ。
北朝鮮のSLBM開発の狙いは「対米核報復能力」と「相互確証破壊能力」の確保である。核攻撃すると共倒れを招くよというメッセージである。ICBMとSLBMを確保し、対米外交力を高め体制維持と南北統一の主導権を確保するのがその目的である。
“平和ボケ”状態の日韓は日米同盟と米韓同盟を強化すると同時に高高度弾道ミサイル防御システム(THAAD)の早期配備と危機管理態勢を強化しないと不意打ちによる致命的な打撃を被る恐れがある。
(拓殖大学客員研究員・元韓国国防省北韓分析官)