防災対策、被害最小化の取り組み着実に


 東日本に記録的な大雨をもたらした台風19号の上陸から1週間が過ぎた。

 死者・行方不明者は約90人に上っている。警察や消防、自衛隊は行方不明者の捜索を急がなければならない。

台風19号で堤防決壊

 台風19号の大雨では各地で記録的な雨量を観測し、70以上の河川の堤防で約130カ所が決壊した。住宅被害は5万棟以上に達し、19日時点で4000人以上が避難所に身を寄せている。避難所では、風邪やインフルエンザなどの感染症や、長時間同じ姿勢を続けることで足の静脈に生じた血栓が肺に詰まるエコノミークラス症候群に注意してほしい。

 被災者は自宅の片付けや水を吸った畳など大量の災害ごみの処理に追われている。この際にも、身を守るためにマスクや手袋の着用を心掛けたい。

 安倍晋三首相は被災地の住民生活と地域産業を再建するために「対策パッケージ」を早急に取りまとめるよう指示した。被災者へのきめ細かい支援が求められる。

 近年の気候変動で、国の想定を超える水害などが頻発している。政府は今回の復旧の際、川底を掘るなどして水位を下げたり、堤防をかさ上げしたりするなど、今後の災害に備えた「改良復旧」に重点を置く方針だ。

 台風や線状降水帯などによる記録的な大雨を想定し、治水対策を講じる必要がある。群馬県の八ツ場ダムが今回、被害拡大を防いだことも今後の教訓とし、長期的な計画に基づくダムや堤防の機能向上など国土強靭(きょうじん)化を進めるべきだ。

 このほか、台風による断水が広い地域に及んでいる。特に浄水場が水没している地域では、復旧に時間がかかるとみられている。

 水道水は浄水場で浄化された後、配水場に送られ、各家庭や事業所に届けられる。このため、浄水場が機能を失うと広範囲で断水が発生する。重要な水道インフラの拠点である浄水場の機能強化も今後の大きな課題だと言える。

 今回の台風は、東北地方で多くの犠牲者を出した。気象庁は当初、1200人以上が犠牲となった1958年の「狩野川台風」を挙げ、伊豆や関東地方に警戒を呼び掛けた。

 東北の雨のピークが避難の難しい深夜になるなど悪条件が重なった面もあるが、情報発信の在り方が適切であったか検証する必要があるだろう。13都県に出された大雨特別警報についても、運用の一層の改善が求められる。

 これまで東北は、台風に襲われることが比較的少なかった。しかし、これからは日本のどこで記録的な大雨に見舞われてもおかしくない。東北の人に限らず、国民一人一人が危機意識を高めていく必要がある。ハード・ソフトの両面で、被害最小化のための取り組みを着実に進めるべきだ。

二次災害に十分に注意を

 台風20号の影響で、あすは被災地を含む地域で大雨が降る恐れがある。

 洪水や土砂災害などの二次災害に十分に注意しなければならない。