埼玉で豚コレラ、これ以上の感染拡大を許すな


 埼玉県秩父市の養豚場で家畜伝染病「豚コレラ」が発生した。昨年9月、岐阜市で26年ぶりに発生が確認されて以来、41例目で、関東地方で確認されたのは今回が初めてとなる。

関東地方で初めて確認

 農林水産省などによると、この養豚場から山梨県内の食肉処理施設に出荷された豚が死ぬなど異常な症状を示したため、山梨県と国が検査したところ、陽性反応が出て感染が確定。埼玉県は養豚場が飼育する678頭を殺処分した。

 関東地方は、いずれも60万頭規模を飼育する群馬県と千葉県の一大産地を抱える。茨城県や栃木県でも40万頭以上が飼育され、首都圏への供給元となっている。関東でも感染が拡大した場合、国内の豚肉供給に影響を及ぼすことが懸念される。

 このほか長野県でも、塩尻市にある県の畜産試験場で豚コレラに感染した豚が見つかった。長野では今年2月の宮田村の養豚場に続き2例目となる。埼玉に隣接する長野では、野生イノシシでの感染例が複数発見されている。感染したイノシシが広範囲を動き回っている可能性があり、警戒が必要だ。

 豚コレラは昨年9月に岐阜市の養豚場で感染が確認されて以来、愛知、滋賀、長野、三重、福井、大阪の1府6県で発生した。今月11日の時点で約13万3500頭の豚が殺処分され、岐阜県では全飼育頭数の半数超に上っている。

 だが収束するどころか、感染は拡大する一方だ。昨年9月以降、感染した子豚の入荷により単発的に発生した長野、滋賀、大阪の3府県を除けば、岐阜、愛知両県に集中していた豚への感染は、今年7月に三重、福井両県に飛び火した。

 対策は決め手を欠いている。発生地周辺の農家が求める豚へのワクチン接種について、農水省は現在も否定的だ。接種すると感染豚との区別が付かなくなり、被害が拡大する恐れがあるためで、国際ルール上も「非清浄国」とみなされて豚肉輸出に影響が出かねない。「肉が売れなくなる」との流通業者の反発も強い。

 日本は現在、豚コレラ発生を受け、国際獣疫事務局(OIE、本部パリ)による清浄国の認定効力が停止された状態となっている。発生から2年以内に鎮圧できれば効力停止は解除されるが、できなければワクチン接種の有無にかかわらず非清浄国に格下げされる。

 これ以上の感染拡大を許すわけにはいかない。政府はワクチン接種も含めた対策強化で、封じ込めに全力を挙げるべきだ。

 養豚場の衛生管理強化も求められる。岐阜県では感染を防ぐため、畜舎やエサの保管場所などを衛生管理区域として設定し、出入り口での消毒を徹底するなどの基本的なことがおろそかにされてきた面がある。従業員が管理区域専用の衣服や靴を準備していなかった農場や施設もあった。

水際対策の強化も重要

 さらに、水際対策の強化も重要だ。豚コレラだけでなく、中国などで流行している家畜伝染病「アフリカ豚コレラ」のウイルス侵入も防止しなければならない。