敬老の日 高齢者の能力生かす社会に


 きょうは敬老の日。総務省によると、65歳以上の推計人口は3588万人と過去最多となり、総人口に占める割合も28・4%と過去最高を更新した。前年比では32万人増で、国立社会保障・人口問題研究所によると、2025年には総人口に占める割合が3割になる。

 100歳以上が7万人超

 また厚生労働省は、100歳以上の人口が7万1238人に上ると発表した。7万人を超えたのは初めて。まさに「人生100年」時代、超高齢化社会が目前に迫っている。寿命が延びること自体は喜ぶべきことだが、一方で進む少子化の中、医療、介護、年金などの社会保障改革、労働力不足などの課題に早急に取り組む必要がある。

 平均寿命の延びを背景に、世界保健機関(WHO)などの高齢者を65歳以上とする定義そのものを見直すべきだとの論もある。老年関連7学会で構成する日本老年学会などは一昨年、高齢者の身体状況や活動能力を科学的に検証した結果、10~20年前と比べて5~10歳の若返り現象が見られることから、75歳以上を「高齢者」、65~74歳を「准高齢者」とすべきだと提言している。

 実際まだ若さを保持していても、法的、世間的な見方が年寄り意識を増進させるとすればよくない。米国など定年制がない国もあり、導入国では年齢引き上げの傾向にある。

 労働力不足を補う対策で、高齢者の雇用は一つの柱にすべきである。技術系の仕事では、長年の経験と知識を蓄えたエンジニアが定年退職し、中国などの海外企業に再就職して、日本で育成された高度な技術力やノウハウがそのまま持っていかれるという現象が起きている。国家にとっても大きな損失だ。

 もちろん職種によっては、高齢になると生産性が落ちる分野もあるだろう。しかし、65歳以上のベテランが中堅に負けない力を発揮できる分野も少なくない。高齢者のさまざまな知識やスキルは、家庭や社会でも大きな力となる。高齢者の能力をもっと生かせる社会づくりを推進したい。

 超高齢化の大きな課題は、介護・医療の負担増である。介護の現場は人手不足が深刻だ。介護ロボットの開発・導入をもっと進めるべきだろう。

 高齢化社会の明暗を分けるのは、健康上の問題で日常生活を制限されることなく過ごせる期間を示す「健康寿命」を延ばせるかどうかだ。厚労省は16年で男性72・14歳、女性74・79歳だった健康寿命を40年までに男女とも3歳以上延ばす目標を掲げている。

 健康寿命の延びは、本人の幸福はもちろん、労働力不足の克服や医療・介護の負担軽減にもつながるなど社会的な影響も大きい。国民的な目標、テーマとして取り組む必要がある。

 客観的に認識する機会を

 70歳、80歳を過ぎても驚くほど元気で若々しい高齢者が増えているのは事実だ。ただ、これを過信すると思わぬ落とし穴がある。高齢運転者による重大事故も後を絶たない。高齢者のさまざまな能力を細かく測定する方法を研究し、客観的に認識する機会を設けることも必要だ。