停電の長期化、一刻も早い復旧に全力挙げよ
台風15号の被害に伴う千葉県での停電は、13日深夜の時点で約16万5500戸で続いている。停電でエアコンが使えず、熱中症による死者も出ている。一刻も早い全面復旧に全力を挙げなければならない。
最長2週間の見通し
東京電力パワーグリッドの金子禎則社長は、ほぼ全域での復旧に最長2週間かかるとの見通しを示した。
東電は当初、11日中に全面復旧する目標を掲げていた。ところが配電線の被害が想定以上にひどく、倒木で現場に近づけないケースも多発。このため、復旧作業が長引いて停電が長期化している。
千葉市の熊谷俊人市長が「楽観的な見通しを発表するのは被災者のためにならない」と苦言を呈したのは当然だろう。東電の見通しに甘さがあったことは否めない。
停電後、通信各社や医療機関では非常用電源の電池切れや故障が続出。千葉県内では熱中症の疑いで3人が死亡した。
ポンプが動かないなどの原因で、13日午前の時点で県内の2万7000戸で断水も続いている。電話やインターネットの通信障害も完全には復旧しておらず、住民の生活に深刻な影響を及ぼしている。
依然として約450人が避難所に身を寄せているなど、不便な暮らしを強いられている。政府は電力会社に人員を1万1000人から1万6000人に増やすように要請した。住民が一日も早く元の生活に戻れるように全面復旧を急がなければならない。
台風15号は関東に上陸した台風としては過去最強クラスで、千葉市で57・5㍍、成田空港で45・8㍍など、全国の15地点で観測史上1位の最大瞬間風速を記録した。
首都圏では9日朝、JR東日本が全ての在来線で始発から運転を見合わせ、通勤・通学の足に大きな影響が出た。成田空港では台風通過後も東京都心に向かう鉄道やバスの復旧が遅れて「陸の孤島」と化し、1万人以上の利用客が空港内に滞留する事態となった。また、千葉県市原市ではゴルフ練習場のネットと支柱数本が倒れて複数の住宅を直撃する被害も生じた。
停電は、1都6県の最大93万軒で発生。大規模停電の原因の一つとして挙げられるのは、千葉県君津市にある鉄塔の倒壊だ。東電などの電力各社は経済産業省の定めた基準に従い、10分間の平均風速が秒速40㍍の風に耐えられるよう鉄塔を設計。今回の台風で君津市内では同12・8㍍で設計基準は下回ったが、それでも高さ約57㍍と約45㍍の2基が倒壊した。
地球温暖化で、今後は台風の勢力がより強大となることが予想される。これまでの想定では対処できない事態の発生が懸念される。
家庭でも備え強めたい
停電をもたらす災害は台風だけではない。1年前の北海道地震では、震源に近い苫東厚真火力発電所の停止で需給バランスが崩れたことなどが原因で電力会社の管内全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)が生じた。企業や家庭でも停電への備えを強めたい。